ると思ってるのよ。けれどもまだ出した例《ためし》がないから、実際どのくらいあるか自分にも分らないわ」
「いやお前に分らなくっても、おれにはちゃんと分ってるから、それでたくさんだよ。女のくせにそうむやみに勇気なんか出された日にゃ、亭主が困るだけだからね」
「ちっとも困りゃしないわ。御亭主のために出す勇気なら、男だって困るはずがないじゃないの」
「そりゃありがたい場合もたまには出て来るだろうがね」と云った津田には固《もと》より本気に受け答えをするつもりもなかった。「今日《こんにち》までそれほど感服に値する勇気を拝見した覚《おぼえ》もないようだね」
「そりゃその通りよ。だってちっとも外へ出さずにいるんですもの。これでも内側へ入って御覧なさい。なんぼあたしだってあなたの考えていらっしゃるほど太平じゃないんだから」
 津田は答えなかった。しかしお延はやめなかった。
「あたしがそんなに気楽そうに見えるの、あなたには」
「ああ見えるよ。大いに気楽そうだよ」
 この好い加減な無駄口の前に、お延は微《かす》かな溜息《ためいき》を洩《も》らした後で云った。
「つまらないわね、女なんて。あたし何だって女に生
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