じゃないか。それにお前はあいつの人格をむやみに攻撃するが、そこに少し無理があるよ。なるほどあいつはしようのない奴《やつ》さ。しようのない奴には違《ちがい》ないけれども、あいつがこうなった因《おこ》りをよく考えて見ると、何でもないんだ。ただ不平だからだ。じゃなぜ不平だというと、金が取れないからだ。ところがあいつは愚図《ぐず》でもなし、馬鹿でもなし、相当な頭を持ってるんだからね。不幸にして正則の教育を受けなかったために、ああなったと思うと、そりゃ気の毒になるよ。つまりあいつが悪いんじゃない境遇が悪いんだと考えさえすればそれまでさ。要するに不幸な人なんだ」
これだけなら口先だけとしてもまず立派なのであるが、彼はついにそこで止《とど》まる事ができないのである。
「それにまだこういう事も考えなければならないよ。ああ自暴糞《やけくそ》になってる人間に逆《さか》らうと何をするか解《わか》らないんだ。誰とでも喧嘩《けんか》がしたい、誰と喧嘩をしても自分の得《とく》になるだけだって、現にここへ来て公言して威張《えば》ってるんだからね、実際始末に了《お》えないよ。だから今もしおれがあいつの要求を跳《は》
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