ても、競《せ》り合《あ》わない前に、彼女はすでに勝っていた。津田にはそういう自覚があった。お延にもこれとほぼ同じ意味で大体の見当《けんとう》がついていた。
 戦争は、この内部の事実を、そのまま表面へ追い出す事ができるかできないかで、一段落《いちだんらく》つかなければならない道理であった。津田さえ正直ならばこれほどたやすい勝負はない訳でもあった。しかしもし一点不正直なところが津田に残っているとすると、これほどまた落し悪《にく》い城はけっしてないという事にも帰着した。気の毒なお延は、否応《いやおう》なしに津田を追い出すだけの武器をまだ造り上げていなかった。向うに開門を逼《せま》るよりほかに何の手段も講じ得ない境遇にある現在の彼女は、結果から見てほとんど無能力者と択《えら》ぶところがなかった。
 なぜ心に勝っただけで、彼女は美くしく切り上げられないのだろうか。なぜ凱歌《がいか》を形の上にまで運び出さなければ気がすまないのだろうか。今の彼女にはそんな余裕がなかったのである。この勝負以上に大事なものがまだあったのである。第二第三の目的をまだ後《あと》に控えていた彼女は、ここを突き破らなければ、そ
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