の後をどうする訳にも行かなかったのである。
それのみか、実をいうと、勝負は彼女にとって、一義の位をもっていなかった。本当に彼女の目指《めざ》すところは、むしろ真実相であった。夫に勝つよりも、自分の疑を晴らすのが主眼であった。そうしてその疑いを晴らすのは、津田の愛を対象に置く彼女の生存上、絶対に必要であった。それ自身がすでに大きな目的であった。ほとんど方便とも手段とも云われないほど重い意味を彼女の眼先へ突きつけていた。
彼女は前後の関係から、思量分別の許す限り、全身を挙げてそこへ拘泥《こだわ》らなければならなかった。それが彼女の自然であった。しかし不幸な事に、自然全体は彼女よりも大きかった。彼女の遥《はる》か上にも続いていた。公平な光りを放って、可憐《かれん》な彼女を殺そうとしてさえ憚《はば》からなかった。
彼女が一口拘泥るたびに、津田は一足彼女から退《しり》ぞいた。二口拘泥れば、二足|退《しりぞ》いた。拘泥るごとに、津田と彼女の距離はだんだん増《ま》して行った。大きな自然は、彼女の小さい自然から出た行為を、遠慮なく蹂躙《じゅうりん》した。一歩ごとに彼女の目的を破壊して悔《く》いな
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