しかし看護婦の方は自由であった。
「その代り外《ほか》のお客さまがいらっしゃいましたね」
「うん。あのお婆さんだろう。ずいぶん肥《ふと》ってるね、あの奥さんは」
 看護婦が悪口《わるくち》の相槌《あいづち》を打つ気色《けしき》を見せないので、津田は一人でしゃべらなければならなかった。
「もっと若い綺麗《きれい》な人が、どんどん見舞に来てくれると病気も早く癒《なお》るんだがな」と云って看護婦を笑わせた彼は、すぐ彼女から冷嘲《ひや》かし返された。
「でも毎日女の方ばかりいらっしゃいますね。よっぽど間《ま》がいいと見えて」
 彼女は小林の来た事を知らないらしかった。
「昨日《きのう》いらしった奥さんは大変お綺麗ですね」
「あんまり綺麗でもないよ。あいつは僕の妹だからね。どこか似ているかね、僕と」
 看護婦は似ているとも似ていないとも答えずに、やっぱりにやにやしていた。

        百四十五

 それは看護婦にとって意外な儲《もう》け日《び》であった。下痢《げり》の気味でいつもの通り診察場に出られなかった医者に、代理を頼まれた彼の友人は、午前の都合を付けてくれただけで、午後から夜へかけて
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