すれば病院で、左へ乗れば岡本の宅《うち》であった。いっそ当初の計画をやめて、叔父《おじ》の所へでも行こうかと考えついた彼女は、考えつくや否や、すぐその方面に横《よこた》わる困難をも想像した。岡本へ行って相談する以上、彼女は打ち明け話をしなければならなかった。今まで隠していた夫婦関係の奥底を、曝《さら》け出さなければ、一歩も前へ出る訳には行かなかった。叔父と叔母の前に、自分の眼が利《き》かなかった自白を綺麗《きれい》にしなければならなかった。お延はまだそれほどの恥を忍ぶまでに事件は逼《せま》っていないと考えた。復活の見込が充分立たないのに、酔興《すいきょう》で自分の虚栄心を打ち殺すような正直は、彼女の最も軽蔑《けいべつ》するところであった。
彼女は決しかねて右と左へ少しずつ揺れた。彼女がこんなに迷っているとはまるで気のつかない津田は、この時|床《とこ》の上に起き上って、平気で看護婦の持って来た膳に向いつつあった。先刻《さっき》お秀から電話のかかった時、すでにお延の来訪を予想した彼は、吉川夫人と入れ代りに細君の姿を病室に見るべく暗《あん》に心の調子を整えていたところが、その細君は途中から
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