た。距離にすればもう二三丁という所まで来た時、彼女は病院へ寄らずに、いったん宅《うち》へ帰ろうかと思い出した。
彼女の心は堀の門を出た折からすでに重かった。彼女はむやみにお秀を突ッ付いて、かえってやり損《そく》なった不快を胸に包んでいた。そこには大事を明らさまに握る事ができずに、裏からわざわざ匂《にお》わせられた羽痒《はが》ゆさがあった。なまじいそれを嗅《か》ぎつけた不安の色も、前よりは一層濃く染めつけられただけであった。何よりも先だつのは、こっちの弱点を見抜かれて、逆《さかさ》まに相手から翻弄《ほんろう》されはしなかったかという疑惑であった。
お延はそれ以上にまだ敏《さと》い気を遠くの方まで廻していた。彼女は自分に対して仕組まれた謀計《はかりごと》が、内密にどこかで進行しているらしいとまで癇《かん》づいた。首謀者は誰にしろ、お秀がその一人である事は確《たしか》であった。吉川夫人が関係しているのも明かに推測された。――こう考えた彼女は急に心細くなった。知らないうちに重囲《じゅうい》のうちに自分を見出《みいだ》した孤軍《こぐん》のような心境が、遠くから彼女を襲って来た。彼女は周囲《あ
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