たり》を見廻した。しかしそこには夫を除いて依《たよ》りになるものは一人もいなかった。彼女は何をおいてもまず津田に走らなければならなかった。その津田を疑ぐっている彼女にも、まだ信力は残っていた。どんな事があろうとも、夫だけは共謀者の仲間入はよもしまいと念じた彼女の足は、堀の門を出るや否や、ひとりでにすぐ病院の方へ向いたのである。
その心理作用が今|喰《く》いとめられなければならなくなった時、通りで会った電車の影をお延は腹の底から呪《のろ》った。もし車中の人が吉川夫人であったとすれば、もし吉川夫人が津田の所へ見舞に行ったとすれば、もし見舞に行ったついでに、――。いかに怜俐《りこう》なお延にも考える自由の与えられていないその後《あと》は容易に出て来なかった。けれども結果は一つであった。彼女の頭は急にお秀から、吉川夫人、吉川夫人から津田へと飛び移った。彼女は何がなしに、この三人を巴《ともえ》のように眺め始めた。
「ことによると三人は自分に感じさせない一種の電気を通わせ合っているかも知れない」
今まで避難場のつもりで夫の所へ駈け込もうとばかり思っていた彼女は考えざるを得なかった。
「この分じ
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