から云えば、そう見識ばるのが取りも直さずあなたの臆病なところなんですよ、好《よ》ござんすか。なぜと云って御覧なさい。そんな見識はただの見栄《みえ》じゃありませんか。よく云ったところで、上《うわ》っ面《つら》の体裁《ていさい》じゃありませんか。世間に対する手前と気兼《きがね》を引いたら後に何が残るんです。花嫁さんが誰も何とも云わないのに、自分できまりを悪くして、三度の御飯を控えるのと同《おん》なじ事よ」
津田は呆気《あっけ》に取られた。夫人の小言《こごと》はまだ続いた。
「つまり色気が多過ぎるから、そんな入《い》らざるところに我《が》を立てて見たくなるんでしょう。そうしてそれがあなたの己惚《おのぼれ》に生れ変って変なところへ出て来るんです」
津田は仕方なしに黙っていた。夫人は容赦なく一歩進んでその己惚を説明した。
「あなたはいつまでも品《ひん》よく黙っていようというんです。じっと動かずにすまそうとなさるんです。それでいて内心ではあの事が始終《しじゅう》苦《く》になるんです。そこをもう少し押して御覧なさいな。おれがこうしているうちには、今に清子の方から何か説明して来るだろう来るだろうと
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