少し考えて見ないと……」
「その考える癖があなたの人格に祟《たた》って来るんです」
津田は「へえ?」と云って驚ろいた。夫人は澄ましたものであった。
「女は考えやしませんよ。そんな時に」
「じゃ考える私は男らしい訳じゃありませんか」
この答えを聴《き》いた時、夫人の態度が急に嶮《けわ》しくなった。
「そんな生意気《なまいき》な口応《くちごた》えをするもんじゃありません。言葉だけで他《ひと》をやり込《こ》めればどこがどうしたというんです、馬鹿らしい。あなたは学校へ行ったり学問をしたりした方《かた》のくせに、まるで自分が見えないんだからお気の毒よ。だから畢竟《ひっきょう》清子さんに逃げられちまったんです」
津田はまた「えッ?」と云った。夫人は構わなかった。
「あなたに分らなければ、私が云って聴《き》かせて上げます。あなたがなぜ行きたがらないか、私にはちゃんと分ってるんです。あなたは臆病なんです。清子さんの前へ出られないんです」
「そうじゃありません。私は……」
「お待ちなさい。――あなたは勇気はあるという気なんでしょう。しかし出るのは見識《けんしき》に拘《かか》わるというんでしょう。私
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