まったのだから、事実やむをえないとしても、もしそういう故障のない時に、津田から詳しいありのままを問われたら、お延はおいそれと彼の希望通り、綿密な返事を惜まずに、彼の要求を満足させたろうかと考えると、そこには大きな疑問があった。お延の平生から推して、津田はむしろごまかされるに違ないと思った。ことに彼がもしやと思っている点を、小林が遠慮なくしゃべったとすれば、お延はなおの事、それを聴《き》かないふりをして、黙って夫の前を通り抜ける女らしく見えた。少くとも津田の観察した彼女にはそれだけの余裕が充分あった。すでにお延の方を諦《あき》らめなければならないとすると、津田は自分に必要な知識の出所《でどころ》を、小林に向って求めるよりほかに仕方がなかった。
 小林は何だかそこを承知しているらしかった。
「なに何にも云やしないよ。嘘《うそ》だと思うなら、もう一遍お延さんに訊《き》いて見たまえ。もっとも僕は帰りがけに悪いと思ったから、詫《あや》まって来たがね。実を云うと、何で詫まったか、僕自身にも解らないくらいのものさ」
 彼はこう云って嘯《うそぶ》いた。それからいきなり手を延べて、津田の枕元にある読みか
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