けの書物を取り上げて、一分ばかりそれを黙読した。
「こんなものを読むのかね」と彼はさも軽蔑《けいべつ》した口調で津田に訊《き》いた。彼はぞんざいに頁《ページ》を剥繰《はぐ》りながら、終りの方から逆に始めへ来た。そうしてそこに岡本という小さい見留印《みとめいん》を見出《みいだ》した時、彼は「ふん」と云った。
「お延さんが持って来たんだな。道理で妙な本だと思った。――時に君、岡本さんは金持だろうね」
「そんな事は知らないよ」
「知らないはずはあるまい。だってお延さんの里《さと》じゃないか」
「僕は岡本の財産を調べた上で、結婚なんかしたんじゃないよ」
「そうか」
 この単純な「そうか」が変に津田の頭に響いた。「岡本の財産を調べないで、君が結婚するものか」という意味にさえ取れた。
「岡本はお延の叔父《おじ》だぜ、君知らないのか。里《さと》でも何でもありゃしないよ」
「そうか」
 小林はまた同じ言葉を繰り返した。津田はなお不愉快になった。
「そんなに岡本の財産が知りたければ、調べてやろうか」
 小林は「えへへ」と云った。「貧乏すると他《ひと》の財産まで苦になってしようがない」
 津田は取り合わな
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