お延に断られたので、成立しなかったけれども、彼は今でもその方が適当な遣口《やりくち》だと信じていた。
お延がなぜこういう用向《ようむき》を帯びて夫人を訪《たず》ねるのを嫌《きら》ったのか、津田は不思議でならなかった。黙っていてもそんな方面へ出入《でいり》をしたがる女のくせに。と彼はその時考えた。夫人の前へ出られるためにわざと用事を拵《こし》らえて貰《もら》ったのと同じ事だのにとまで、自分の動議を強調して見た。しかしどうしても引き受けたがらないお延を、たって強《し》いる気もまたその場合の彼には起らなかった。それは夫婦打ち解けた気分にも起因していたが、一方から見ると、またお延の辞退しようにも関係していた。彼女は自分が行くと必ず失敗するからと云った。しかしその理由を述べる代りに、津田ならきっと成効《せいこう》するに違《ちがい》ないからと云った。成効するにしても、病院を出た後《あと》でなければ会う訳に行かないんだから、遅くなる虞《おそ》れがあると津田が注意した時、お延はまた意外な返事を彼に与えた。彼女は夫人がきっと病院へ見舞に来るに違ないと断言した。その時機を利用しさえすれば、一番自然にまた
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