貰って来た訳でもないのよ。叔父さんにはあたしに指輪を買ってくれる約束があるのよ。お嫁に行くとき買ってやらない代りに、今に買ってやるって、此間《こないだ》からそう云ってたのよ。だからそのつもりでくれたんでしょうおおかた。心配しないでもいいわ」
津田はお延の指を眺めた。そこには自分の買ってやった宝石がちゃんと光っていた。
百十三
二人はいつになく融《と》け合った。
今までお延の前で体面を保つために武装していた津田の心が吾知《われし》らず弛《ゆる》んだ。自分の父が鄙吝《ひりん》らしく彼女の眼に映りはしまいかという掛念《けねん》、あるいは自分の予期以下に彼女が父の財力を見縊《みくび》りはしまいかという恐れ、二つのものが原因になって、なるべく京都の方面に曖昧《あいまい》な幕を張り通そうとした警戒が解けた。そうして彼はそれに気づかずにいた。努力もなく意志も働かせずに、彼は自然の力でそこへ押し流されて来た。用心深い彼をそっと持ち上げて、事件がお延のために彼をそこまで運んで来てくれたと同じ事であった。お延にはそれが嬉《うれ》しかった。改めようとする決心なしに、改たまった夫の態
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