いました。兄さんが妹の親切を受けて下さらないのに、妹はまだその親切を尽くす気でいたら、その親切は義務とどこが違うんでしょう。私の親切を兄さんの方で義務に変化させてしまうだけじゃありませんか」
「お秀もう解ったよ」と津田がようやく云い出した。彼の頭に妹のいう意味は判然《はっきり》入った。けれども彼女の予期する感情は少しも起らなかった。彼は先刻から蒼蠅《うる》さいのを我慢して彼女の云い草を聴いていた。彼から見た妹は、親切でもなければ、誠実でもなかった。愛嬌《あいきょう》もなければ気高《けだか》くもなかった。ただ厄介《やっかい》なだけであった。
「もう解ったよ。それでいいよ。もうたくさんだよ」
 すでに諦《あき》らめていたお秀は、別に恨《うら》めしそうな顔もしなかった。ただこう云った。
「これは良人《うち》が立て替えて上げるお金ではありませんよ、兄さん。良人が京都へ保証して成り立った約束を、兄さんがお破りになったために、良人ではお父さんの方へ義理ができて、仕方なしに立て替えた事になるとしたら、なんぼ兄さんだって、心持よく受け取る気にはなれないでしょう。私もそんな事で良人《うち》を煩《わずら》
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