おいてすでにお延の意気込を恨《うら》めしく摧《くじ》いた。彼女の予期は外《はず》れた。
「どうしもしないわ。ただ要るから拵えただけよ」
 こう云った彼女は、腹の中でひやひやした。彼女は津田が真面目《まじめ》くさってその後を訊く事を非常に恐れた。それは夫婦の間に何らの気脈が通じていない証拠を、お秀の前に暴露《ばくろ》するに過ぎなかった。
「訳なんか病気中に訊かなくってもいいのよ。どうせ後で解《わか》る事なんだから」
 これだけ云った後でもまだ不安心でならなかったお延は、津田がまだ何とも答えない先に、すぐその次を付け加えてしまった。
「よし解らなくったって構わないじゃないの。たかがこのくらいのお金なんですもの、拵えようと思えば、どこからでも出て来るわ」
 津田はようやく手に持った小切手を枕元へ投げ出した。彼は金を欲しがる男であった。しかし金を珍重する男ではなかった。使うために金の必要を他人より余計痛切に感ずる彼は、その金を軽蔑《けいべつ》する点において、お延の言葉を心から肯定するような性質をもっていた。それで彼は黙っていた。しかしそれだからまたお延に一口の礼も云わなかった。
 彼女は物足ら
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