々わずかな金額ですから、それについてとやかく云う気はちっともありませんけれども、あたしの方の心遣いは、まるで兄さんに通じていないんだから、それがただ残念だと云いたいんです」
お延はなお黙っている津田の顔を覗《のぞ》き込んだ。
「あなた何とかおっしゃいよ」
「何て」
「何てって、お礼をよ。秀子さんの親切に対してのお礼よ」
「たかがこれしきの金を貰うのに、そんなに恩に着せられちゃ厭《いや》だよ」
「恩に着せやしないって今云ったじゃありませんか」とお秀が少し癇走《かんばし》った声で弁解した。お延は元通りの穏やかな調子を崩《くず》さなかった。
「だから強情を張らずに、お礼をおっしゃいと云うのに。もしお金を拝借するのがお厭《いや》なら、お金はいただかないでいいから、ただお礼だけをおっしゃいよ」
お秀は変な顔をした。津田は馬鹿を云うなという態度を示した。
百七
三人は妙な羽目に陥《おちい》った。行《いき》がかり上《じょう》一種の関係で因果《いんが》づけられた彼らはしだいに話をよそへ持って行く事が困難になってきた。席を外《はず》す事は無論できなくなった。彼らはそこへ坐《すわ
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