しが嫂さんに対して面目《めんぼく》なくなるだけじゃありませんか」
沈黙がまた三人の上に落ちた。津田はわざと口を利《き》かなかった。お延には利く必要がなかった。お秀は利く準備をした。
「兄さん、あたしはこれでもあなた方に対して義務を尽しているつもりです。――」
お秀がやっとこれだけ云いかけた時、津田は急に質問を入れた。
「ちょっとお待ち。義務かい、親切かい、お前の云おうとする言葉の意味は」
「あたしにはどっちだって同《おん》なじ事です」
「そうかい。そんなら仕方がない。それで」
「それでじゃありません。だからです。あたしがあなた方の陰へ廻って、お父さんやお母さんを突ッついた結果、兄さんや嫂《ねえ》さんに不自由をさせるのだと思われるのが、あたしにはいかにも辛《つら》いんです。だからその額だけをどうかして上げようと云う好意から、今日わざわざここへ持って来たと云うんです。実は昨日《きのう》嫂さんから電話がかかった時、すぐ来《き》ようと思ったんですけれども、朝のうちは宅《うち》に用があったし、午《ひる》からはその用で銀行へ行く必要ができたものですから、つい来損《きそこ》なっちまったんです。元
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