はどうもお父さんの云う事が変でならないんだ。垣根を繕《つく》ろったの、家賃が滞《とどこお》ったのって、そんな費用は元来|些細《ささい》なものじゃないか」
「そうも行かないでしょう、あなた。これで自分の家《うち》を一軒持って見ると」
「我々だって一軒持ってるじゃないか」
お延は彼女に特有な微笑を今度はお秀の方に見せた。お秀も同程度の愛嬌《あいきょう》を惜まずに答えた。
「兄さんはその底に何か魂胆《こんたん》があるかと思って、疑っていらっしゃるんですよ」
「そりゃあなた悪いわ、お父さまを疑ぐるなんて。お父さまに魂胆のあるはずはないじゃありませんか、ねえ秀子さん」
「いいえ、父や母よりもね、ほかにまだ魂胆があると思ってるんですのよ」
「ほかに?」
お延は意外な顔をした。
「ええ、ほかにあると思ってるに違ないのよ」
お延は再び夫の方に向った。
「あなた、そりゃまたどういう訳なの」
「お秀がそう云うんだから、お秀に訊《き》いて御覧よ」
お延は苦笑した。お秀の口を利く順番がまた廻って来た。
「兄さんはあたし達が陰で、京都を突ッついたと思ってるんですよ」
「だって――」
お延はそれより以上
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