四角な窓から書生が顔を出した。そうしてそこに動かないお延の姿を認めた時、誰何《すいか》でもする人のような表情を彼女の上に注いだ。彼女はすぐ津田への来客があるかないかを確かめた。それが若い女であるかないかも訊《き》いた。それからわざと取次を断って、ひとりで階子段《はしごだん》の下まで来た。そうして上を見上げた。
 上では絶えざる話し声が聞こえた。しかし普通雑談の時に、言葉が対話者の間を、淀《よど》みなく往ったり来たり流れているのとはだいぶ趣《おもむき》を異《こと》にしていた。そこには強い感情があった。亢奮《こうふん》があった。しかもそれを抑《おさ》えつけようとする努力の痕《あと》がありありと聞こえた。他聞《たぶん》を憚《はば》かるとしか受取れないその談話が、お延の神経を針のように鋭どくした。下駄を見つめた時より以上の猛烈さがそこに現われた。彼女は一倍猛烈に耳を傾むけた。
 津田の部屋は診察室の真上にあった。家の構造から云うと、階子段を上《あが》ってすぐ取《とっ》つきが壁で、その右手がまた四畳半の小さい部屋になっているので、この部屋の前を廊下伝いに通り越さなければ、津田の寝ている所へは出ら
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