津田に云わせると、ただ偶然の事実に過ぎなかった。
「それでお前はこの事件の責任者はお延だと云うのかい」
お秀はそうだと答えたいところをわざと外《そら》した。
「いいえ、嫂さんの事なんか、あたしちっとも云ってやしません。ただ兄さんが変った証拠《しょうこ》にそれだけの事実を主張するんです」
津田は表向どうしても負けなければならない形勢に陥《おちい》って来た。
「お前がそんなに変ったと主張したければ、変ったでいいじゃないか」
「よかないわ。お父さんやお母さんにすまないわ」
すぐ「そうかい」と答えた津田は冷淡に「そんならそれでもいいよ」と付け足した。
お秀はこれでもまだ後悔しないのかという顔つきをした。
「兄さんの変った証拠《しょうこ》はまだあるんです」
津田は素知《そし》らぬ風をした。お秀は遠慮なくその証拠というのを挙《あ》げた。
「兄さんは小林さんが兄さんの留守へ来て、嫂《ねえ》さんに何か云やしないかって、先刻《さっき》から心配しているじゃありませんか」
「煩《うる》さいな。心配じゃないって先刻説明したじゃないか」
「でも気になる事はたしかなんでしょう」
「どうでも勝手に解釈する
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