っている兄の態度でなかった。彼女は兄が自分の手前を憚《はば》かって、不断の甘いところを押し隠すために、わざと嫂《あによめ》に対して無頓着《むとんじゃく》を粧《よそお》うのだと解釈した。心のうちで多少それを小気味よく感じた彼女も、下から電話の催促をする薬局生の大きな声を聞いた時には、それでも兄の代りに立ち上らない訳に行かなかった。彼女はわざわざ下まで降りて行った。しかしそれは何の役にも立たなかった。薬局生が好い加減にあしらって、荒らし抜いた後の受話器はもう不通になっていた。
形式的に義務を済ました彼女が元の座に帰って、再び二人に共通な話題の緒口《いとくち》を取り上げた時、一方では急込《せきこ》んだお時が、とうとう我慢し切れなくなって自働電話を棄《す》てて電車に乗ったのである。それから十五分と経《た》たないうちに、津田はまた予想外な彼女の口から予想外な用事を聞かされて驚ろいたのである。
お時の帰った後の彼の心は容易に元へ戻らなかった。小林の性格はよく知り抜いているという自信はありながら、不意に自分の留守宅《るすたく》に押しかけて来て、それほど懇意でもないお延を相手に、話し込もうとも思わ
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