に感心しないのは、津田といえどもお秀に譲らなかった。あらゆる意味で父の同情者でありながら、この一点になると、さすがのお秀も津田と同じように眉《まゆ》を顰《ひそ》めなければならなかった。父の品性。それはむしろ別問題であった。津田はお秀の補助を受ける事を快よく思わなかった。お秀はまた兄夫婦に対して好い感情をもっていなかった。その上夫や姑《しゅうと》への義理もつらく考えさせられた。二人はまず実際問題をどう片づけていいかに苦しんだ。そのくせ口では双方とも底の底まで突き込んで行く勇気がなかった。互いの忖度《そんたく》から成立った父の料簡《りょうけん》は、ただ会話の上で黙認し合う程度に発展しただけであった。
九十七
感情と理窟の縺《もつ》れ合《あ》った所を解《ほ》ごしながら前へ進む事のできなかった彼らは、どこまでもうねうね歩いた。局所に触るようなまた触らないような双方の態度が、心のうちで双方を焦烈《じれ》ったくした。しかし彼らは兄妹《きょうだい》であった。二人共ねちねちした性質を共通に具えていた。相手の淡泊《さっぱり》しないところを暗《あん》に非難しながらも、自分の方から爆発
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