《たち》のものであった。心のうちで劈頭《へきとう》に「まさか」と叫んだ彼は、次の瞬間に「ことによると」と云い直さなければならなくなった。
臆断の鏡によって照らし出された、父の心理状態は、下《しも》のような順序で、予期通りの結果に到着すべく仕組まれていた。――最初に体《てい》よく送金を拒絶する。津田が困る。今までの行《いき》がかり上《じょう》堀に訳を話す。京都に対して責任を感ずべく余儀なくされている堀は、津田の窮を救う事によって、始めて父に対する保証の義務を果す事ができる。それで否応《いやおう》なしに例月分を立て替えてくれる。父はただ礼を云って澄ましている。
こう段落をつけて考えて見ると、そこには或種の要心があった。相当な理窟《りくつ》もあった。或程度の手腕は無論認められた。同時に何らの淡泊《たんぱく》さがそこには存在していなかった。下劣とまで行かないでも、狐臭《きつねくさ》い狡獪《こうかい》な所も少しはあった。小額の金に対する度外《どはず》れの執着心が殊更《ことさら》に目立って見えた。要するにすべてが父らしくできていた。
ほかの点でどう衝突しようとも、父のこうした遣口《やりくち》
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