らからいうと、それはむしろ陳腐過《ちんぷす》ぎる社交上の形式に過ぎなかった。それから一種の虚偽に近い努力でもあった。彼らには自分ら兄妹《きょうだい》でなくては見られない、また自分ら以外の他人には通用し悪《にく》い黙契があった。どうせお互いに好く思われよう、好く思われようと意識して、上部《うわべ》の所作《しょさ》だけを人並に尽したところで、今さら始まらないんだから、いっそ下手に騙《だま》し合う手数《てかず》を省《はぶ》いて、良心に背《そむ》かない顔そのままで、面と向き合おうじゃないかという無言の相談が、多年の間にいつか成立してしまったのである。そうしてその良心に背かない顔というのは、取《とり》も直《なお》さず、愛嬌《あいきょう》のない顔という事に過ぎなかった。
 第一に彼らは普通の兄妹として親しい間柄《あいだがら》であった。だから遠慮の要《い》らないという意味で、不愛嬌《ぶあいきょう》な挨拶《あいさつ》が苦にならなかった。第二に彼らはどこかに調子の合わないところをもっていた。それが災《わざわい》の元で、互の顔を見ると、互に弾《はじ》き合《あ》いたくなった。
 ふと首を上げてそこにお秀を見
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