ばかり考えている訳に行かなかった。中でも母には、他《ひと》の知らない気苦労をしなければならなかった。
器量望みで貰われただけあって、外側から見たお秀はいつまで経《た》っても若かった。一つ年下のお延に比べて見てもやっぱり若かった。四歳《よっつ》の子持とはどうしても考えられないくらいであった。けれどもお延と違った家庭の事情の下《もと》に、過去の四五年を費やして来た彼女は、どこかにまたお延と違った心得をもっていた。お延より若く見られないとも限らない彼女は、ある意味から云って、たしかにお延よりも老《ふ》けていた。言語態度が老けているというよりも、心が老けていた。いわば、早く世帯染《しょたいじ》みたのである。
こういう世帯染みた眼で兄夫婦を眺めなければならないお秀には、常に彼らに対する不満があった。その不満が、何か事さえあると、とかく彼女を京都にいる父母《ちちはは》の味方にしたがった。彼女はそれでもなるべく兄と衝突する機会を避けるようにしていた。ことに嫂《あによめ》に気下味《きまず》い事をいうのは、直接兄に当るよりもなお悪いと思って、平生から慎《つつ》しんでいた。しかし腹の中はむしろ反対であ
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