かった。この好成蹟《こうせいせき》がますます彼を楽天的にした。誰からでも好かれているという自信をもった彼は、無論お秀からも好かれているに違ないと思い込んでいた。そうしてそれは間違でも何でもなかった。実際彼はお秀から嫌われていなかったのである。
 器量望みで貰われたお秀は、堀の所へ片づいてから始めて夫の性質を知った。放蕩《ほうとう》の酒で臓腑《ぞうふ》を洗濯されたような彼の趣《おもむき》もようやく解する事ができた。こんなに拘泥《こうでい》の少ない男が、また何の必要があって、是非自分を貰いたいなどと、真面目《まじめ》に云い出したものだろうかという不審さえ、すぐうやむやのうちに葬られてしまった。お延ほど根強くない彼女は、その意味を覚《さと》る前に、もう妻としての興味を夫から離して、母らしい輝やいた始めての眼を、新らしく生れた子供の上に注《そそ》がなければならなくなった。
 お秀のお延と違うところはこれだけではなかった。お延の新世帯《しんしょたい》が夫婦二人ぎりで、家族は双方とも遠い京都に離れているのに反して、堀には母があった。弟も妹も同居していた。親類の厄介者までいた。自然の勢い彼女は夫の事
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