彼女はわざと黙っていた。小林はまたそんな事を顧慮《こりょ》する男ではなかった。秩序も段落も構わない彼の話題は、突飛《とっぴ》にここかしこを駈《か》け回《めぐ》る代りに、時としては不作法《ぶさほう》なくらい一直線に進んだ。
「やッぱり細君の力には敵《かな》いませんね、どんな男でも。――僕のような独身ものには、ほとんど想像がつかないけれども、何かあるんでしょうね、そこに」
 お延はとうとう自分を抑える事ができなくなった。彼女は笑い出した。
「ええあるわ。小林さんなんかにはとても見当《けんとう》のつかない神秘的なものがたくさんあるわ、夫婦の間には」
「あるなら一つ教えていただきたいもんですね」
「独《ひと》りものが教わったって何にもならないじゃありませんか」
「参考になりますよ」
 お延は細い眼のうちに、賢《かし》こそうな光りを見せた。
「それよりあなた御自分で奥さんをお貰《もら》いになるのが、一番|捷径《ちかみち》じゃありませんか」
 小林は頭を掻《か》く真似《まね》をした。
「貰いたくっても貰えないんです」
「なぜ」
「来てくれ手がなければ、自然貰えない訳じゃありませんか」
「日本は女の
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