どこにも認められなかった。
「ただ念のためにですよ。あとでわたくしがまた何とか云われると困りますから」
 お延はそれでも小林が気を悪くしない用心に、こんな弁解がましい事を附け加えずにはいられなかった。
 お時が自働電話へ駈《か》けつけて津田の返事を持って来る間、二人はなお対座した。そうして彼女の帰りを待ち受ける時間を談話で繋《つな》いだ。ところがその談話は突然な閃《ひら》めきで、何にも予期していなかったお延の心臓を躍《おど》らせた。

        八十二

「津田君は近頃だいぶおとなしくなったようですね。全く奥さんの影響でしょう」
 お時が出て行くや否や、小林は藪《やぶ》から棒《ぼう》にこんな事を云い出した。お延は相手が相手なので、当《あた》らず障《さわ》らずの返事をしておくに限ると思った。
「そうですか。私自身じゃ影響なんかまるでないように思っておりますがね」
「どうして、どうして。まるで人間が生れ変ったようなものです」
 小林の云い方があまり大袈裟《おおげさ》なので、お延はかえって相手を冷評《ひやか》し返してやりたくなった。しかし彼女の気位《きぐらい》がそれを許さなかったので、
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