らなかった。女らしいところがなくなってしまったのに、まだ女としてこの世の中に生存するのは、真《しん》に恐ろしい生存であるとしか若い彼女には見えなかった。
そんな距離の遠い感想が、この若い細君の胸に湧《わ》いているとは夢にも気のつきようはずのない叔父は、自分の前に据《す》えられた膳《ぜん》に向って胡坐《あぐら》を掻《か》きながら、彼女を見た。
「おい何をぼんやりしているんだ。しきりに考え込んでいるじゃないか」
お延はすぐ答えた。
「久しぶりにお給仕でもしましょう」
飯櫃《おはち》があいにくそこにないので、彼女が座を立ちかけると叔母が呼びとめた。
「御給仕をしたくったって、麺麭《パン》だからできないよ」
下女が皿の上に狐色に焦《こ》げたトーストを持って来た。
「お延、叔父さんは情《なさ》けない事になっちまったよ。日本に生れて米の飯が食えないんだから可哀想《かわいそう》だろう」
糖尿病《とうにょうびょう》の叔父は既定の分量以外に澱粉質《でんぷんしつ》を摂取《せっしゅ》する事を主治医から厳禁されてしまったのである。
「こうして豆腐ばかり食ってるんだがね」
叔父の膳にはとても一人では
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