にばかりは参らんです、世の中というものはね。第一|物《もの》に区切《くぎり》のあるという事をあなたは御承知ですか」
 自業自得な夫に対する叔母の態度が澄ましたものであると共に、叔父の挨拶《あいさつ》も相変らずであった。久しぶりで故郷の空気を吸ったような感じのしたお延は、心のうちで自分の目の前にいるこの一対《いっつい》の老夫婦と、結婚してからまだ一年と経《た》たない、云わば新生活の門出《かどで》にある彼ら二人とを比較して見なければならなかった。自分達も長《なが》の月日さえ踏んで行けば、こうなるのが順当なのだろうか、またはいくら永くいっしょに暮らしたところで、性格が違えば、互いの立場も末始終《すえしじゅう》まで変って行かなければならないのか、年の若いお延には、それが智恵と想像で解けない一種の疑問であった。お延は今の津田に満足してはいなかった。しかし未来の自分も、この叔母のように膏気《あぶらけ》が抜けて行くだろうとは考えられなかった。もしそれが自分の未来に横《よこた》わる必然の運命だとすれば、いつまでも現在の光沢《つや》を持ち続けて行こうとする彼女は、いつか一度悲しいこの打撃を受けなければな
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