二人が声を出して笑い合っている傍《そば》に、どこからか来た一人の若い男がちょっと立ちどまった。無地の羽織に友縫《ともぬい》の紋《もん》を付けて、セルの行灯袴《あんどんばかま》を穿《は》いたその青年紳士は、彼らと顔を見合せるや否や、「失礼」と挨拶《あいさつ》でもして通り過ぎるように、鄭重《ていちょう》な態度を無言のうちに示して、板敷へ下りて向うへ行った。継子は赧《あか》くなった。
「もう這入《はい》りましょうよ」
 彼女はすぐお延を促《うな》がして内へ入った。

        四十九

 場中《じょうちゅう》の様子は先刻《さっき》見た時と何の変りもなかった。土間を歩く男女《なんにょ》の姿が、まるで人の頭の上を渡っているように煩《わず》らわしく眺《なが》められた。できるだけ多くの注意を惹《ひ》こうとする浮誇《ふこ》の活動さえ至る所に出現した。そうして次の色彩に席を譲るべくすぐ消滅した。眼中の小世界はただ動揺であった、乱雑であった、そうしていつでも粉飾《ふんしょく》であった。
 比較的静かな舞台《ぶたい》の裏側では、道具方の使う金槌《かなづち》の音が、一般の予期を唆《そそ》るべく、折々場
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