し、由雄が病気でなくって、あたしといっしょに来たらどうするの」
「その時はその時で、またどうかするつもりなんでしょう。もう一間《いっけん》取るとか、それでなければ、吉川さんの方といっしょになるとか」
「吉川さんとも前から約束があったの?」
「ええ」
継子はその後を云わなかった。岡本と吉川の家庭がそれほど接近しているとも考えていなかったお延は、そこに何か意味があるのではないかと、ちょっと不審を打って見たが、時間に余裕のある人の間に起りがちな、単に娯楽のための約束として、それを眺める余地も充分あるので、彼女はついに何にも訊《き》かなかった。二人の話はただ吉川夫人の双眼鏡に触れただけであった。お延はわざと手真似《てまね》までして見せた。
「こうやって真《ま》ともに向けるんだから、敵《かな》わないわね」
「ずいぶん無遠慮でしょう。だけど、あれ西洋風なんだって、宅《うち》のお父さまがそうおっしゃってよ」
「あら西洋じゃ構わないの。じゃあたしの方でも奥さんの顔をああやってつけつけ見ても好い訳ね。あたし見て上げようかしら」
「見て御覧なさい、きっと嬉《うれ》しがってよ。延子さんはハイカラだって」
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