した。廊下の端《はじ》に立って、半《なか》ば柱に身を靠《も》たせたお延が、継子の姿を見出《みいだ》すまでには多少の時間がかかった。それを向う側に並んでいる売店の前に認めた時、彼女はすぐ下へ降りた。そうして軽く足早に板敷を踏んで、目指《めざ》す人のいる方へ渡った。
「何を買ってるの」
 後《うしろ》から覗《のぞ》き込むようにして訊《き》いたお延の顔と、驚ろいてふり返った継子の顔とが、ほとんど擦《す》れ擦れになって、微笑《ほほえ》み合った。
「今困ってるところなのよ。一《はじめ》さんが何かお土産《みやげ》を買ってくれって云うから、見ているんだけれども、あいにく何《なん》にもないのよ、あの人の喜びそうなものは」
 疳違《かんちが》いをして、男の子の玩具《おもちゃ》を買おうとした継子は、それからそれへといろいろなものを並べられて、買うには買われず、止《よ》すには止されず、弱っているところであった。役者に縁故のある紋《もん》などを着けた花簪《はなかんざし》だの、紙入だの、手拭《てぬぐい》だのの前に立って、もじもじしていた彼女は、どうしたらよかろうという訴えの眼をお延に向けた。お延はすぐ口を利《き
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