う」
 お延は少し驚ろかされた眼を、教わった通りの見当《けんとう》へつけて、そこに容易《たやす》く吉川夫人らしい人の姿を発見した。
「百合子さん、眼が早いのね、いつ見つけたの」
「見つけやしないのよ。先刻《さっき》から知ってるのよ」
「叔母さんや継子さんも知ってるの」
「ええ皆《みん》な知ってるのよ」
 知らないのは自分だけだったのにようやく気のついたお延が、なおその方を百合子の影から見守っていると、故意だか偶然だか、いきなり吉川夫人の手にあった双眼鏡が、お延の席に向けられた。
「あたし厭《いや》だわ。あんなにして見られちゃ」
 お延は隠れるように身を縮《ちぢ》めた。それでも向側《むこうがわ》の双眼鏡は、なかなかお延の見当から離れなかった。
「そんならいいわ。逃げ出しちまうだけだから」
 お延はすぐ継子の後《あと》を追《おっ》かけて廊下へ出た。

        四十八

 そこから見渡した外部《そと》の光景も場所柄《ばしょがら》だけに賑《にぎ》わっていた。裏へ貫《ぬき》を打って取《と》り除《はず》しのできるように拵《こし》らえた透《すか》しの板敷を、絶間なく知らない人が往ったり来たり
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