と誤解されている、文学、美術、音楽、演劇等はこの方面に属します。これらのものはなくてすむものであります、しかもありたいものなのです。これらは、幾分か片方で切りつめて余《あま》った energy をこちらの方に向ける、どちらかといえば押しのふとい方なのです。私らはこの方面へ向って行く。この方面からいえば時間距離なんていう考はありません。飛行機――飛行機のような早いものの必要もなく、堅牢《けんろう》なものの必要もなく、数でこなす必要もない。生涯にたった一つだっていいものを書けばいいのです。即ち私どもとあなた方とはかく反対になっているのです。――二つのものの性質を概括《がいかつ》していうと、あなた方の方は規律で行き、私どもの方は不規律で行く。その代り報酬は極《ごく》悪い。金持になる人、なりたい人は、規律に服従せねばならない。あなた方の方は mechanical science の応用で、私どもの方は mental なのだから割がいいようだが、実は大変に損をしているのです。しかしあなた方は自由が少いが、私どもは自由というものがなければ出来ない仕事であります。なおいいかえれば、あなた方は仕事に服従して我《が》というものをなくなさなければ出来ないのです。各自個々勝手な方面へ行ったなら、仕事はできない。私どもの方は我を発揮しなければ、何も出来ません。
 そこで、あなた方の方でする仕事というものを見ると、普遍的即ち universal の性質を持っている。私どもの方は universal でなくて personal の性質を持っています。なお敷衍《ふえん》していえば、あなた方はまず公式を頭の中に入れて、その application が必要である。それは人間が考えたものに違いないけれども、私がこのものがいやだといっても御免|蒙《こうむ》ることはできない。universal ということは personality という個人としての人格じゃなく、personality を eliminate し得る仕事なのです。この鉄道は誰が敷設《ふせつ》したという事は素人にはあまり参考になりません。この講堂は誰が作ったって問題にならない。あすこにぶらさがってるランプだか、電気だか何だか知らないが、これには何の personality もない。即ち自然の法則を apply しただけなのであります。
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