胃の加減で旨《うま》くも何ともなかった。天下に何が旨いってスキ焼ほど旨いものは無いと思うがねと田中君が云った。田中君はスキ焼の主唱者だけあって、大変食べた。傍《はた》で見ていて羨《うらや》ましいほど食べた。余はしようがないから畳の上に仰向《あおむき》に寝ていた。すると女の一人が枕を御貸し申しましょうかと云いながら、自分の膝《ひざ》を余の頭の傍《そば》へ持って来た。この枕では御気に入りますまいとか何とか弁じている。結構だから、もう少しこっちの方へ出してくれと頼んで、その女の膝の上に頭を乗せて寝ていた。不思議な事に、橋本も活動の余地がないものと見えて、余と同様の真似《まね》をして、向うの方に長くなっている。枕元では田中君が女を相手に碁石《ごいし》でキシャゴ弾《はじ》きをやって大騒ぎをしている。余があまり静《しずか》だものだから、膝を貸した女は眠ったのだと思って、顋《あご》の下をくすぐった。
帰るときには、神《かみ》さんらしいものが、しきりに泊って行けと勧めた。門を出るとまた急に暗くなった。森閑《しんかん》として人の気合《けわい》のない往来をホテルまで、影のように歩いて来て、今までの派出《
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