れて、星が遠くに見える晩であったが、月がないので往来は暗かった。危《あぶ》のうございますから御案内を致しましょうと云って、ホテルの小僧がついて来た。草の生えた四角な空地《あきち》を横切って、瓦斯《ガス》も電気もない所を、茫漠《ぼうばく》と二丁ほど来ると、門の奥から急に強い光が射した。玄関に女が二三人出ている。我々の来るのを待っていたような挨拶をした。座敷は畳が敷いて胡坐《あぐら》がかけるようになっていた。窓を見ると、壁の厚さが一尺ほどあったので、始めて普通の日本家屋でないと云う事が解った。窓の高さは畳から一尺に足りないから、足をかけると厚い壁の上に乗る事ができる。女が危のうございますと云った。外を覗《のぞ》いたら真闇《まっくら》に静かであった。
女は三四人で、いずれも東京の言葉を使わなかった。田中君はわざと名古屋訛《なごやなまり》を真似《まね》て調戯《からか》っていた。女は御上手だ事とか、御上手やなとか、何とか云って賞《ほ》めていた。ところが前触《まえぶれ》のスキ焼はなかなか出て来ない。酒を飲まないで、肴《さかな》を突っついて手持無沙汰《てもちぶさた》であった。スキ焼があらわれても、
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