はで》なスキ焼を眼前《がんぜん》に浮かべると、やはり小説じみた心持がした。

        三十

 朝食に鶉《うずら》を食わすから来いという案内である。朝飯《あさめし》の御馳走《ごちそう》には、ケムブリジに行ったときたしか浜口君に呼ばれた事があると云う記憶がぼんやり残っているだけだから、大変珍らしかった。もっとも午前十一時に立つ客に晩餐《ばんさん》を振舞う方法は、世界にないんだから仕方がない。鶉に至っては生れてからあんまり食った事がない。昔|正岡子規《まさおかしき》に、手紙をもってわざわざ大宮公園《おおみやこうえん》に呼び寄せられたとき、鶉だよと云って喰わせられたのが初めてぐらいなものである。その鶉の朝飯を拵《こしら》えるからと云って、特に招待するんだから、佐藤は物数奇《ものずき》に違いない。そうして、好いかほかに何にもない、鶉ばかりだよと念を押した。いったい鶉を何羽喰わせるつもりか知らんと思って、どこから貰ったのかと聞くと、いや鶉は旅順の名物だ、もう出る時分だからちょうど好かろうとすでに鶉を捕《と》ったような事を云っていた。
 白仁さんのところへ暇乞《いとまごい》に行ったので少し
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