のために、累々《るいるい》と往来を塞《ふさ》がれている。零落した馬車は容赦なく鳴動《めいどう》してその上を通るのだから、凸凹《でこぼこ》の多い川床《かわどこ》を渡るよりも危険である。二百三高地《にひゃくさんこうち》へ行く途中などでは、とうとうこの火打石に降参して、馬車から下りてしまった。そうして痛い腹を抱《かか》えながら、膏汗《あぶらあせ》になって歩いたくらいである。鶏冠山《けいかんざん》を下りるとき、馬の足掻《あがき》が何だか変になったので、気をつけて見ると、左の前足の爪の中に大きな石がいっぱいに詰《はま》っていた。よほど厚い石と見えて爪から余った先が一寸《いっすん》ほどもある。したがって馬は一寸がた跛《ちんば》を引いて車体を前へ運んで行く訳になる。席から首を延ばして、この様子を見た時は、安んじて車に乗っているのが気の毒なくらい、馬に対して痛わしい心持がした。御者《ぎょしゃ》に注意してやると、御者は支那語で何とか云いながら、鞭《むち》を棄《す》てて下へ下りたが、非常に固く詰《つま》っていたと見えて、叩《たた》いても引っ張っても石が取れないので、またのそのそ御者台へ上がった。そうして、
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