げ》とを背中合せに接《つ》いだもので、その象牙の方にはいろいろの模様が彫刻してあった。この模様の揃った札を何枚か並べて出すと勝になるようにも思われたが、要するに、竹と象牙がぱちぱち触れて鳴るばかりで、どこが博奕なんだか、実はいっこう解らなかった。ただこの象牙と竹を接ぎ合わした札を二三枚貰って来たかった。
一つの室では五六人寄って、そのうちの一人が笛《ふえ》を吹くのを聞いていた。幕を開けて首を出したら、ぱたりと笛を歇《や》めてしまった。また吹き始めるかと思って、しばらく室の中に立っていたが、とうとう吹かなかった。室の中には妙な書が麗々と壁に貼《は》りつけてある。いずれも下手《まず》いものだのに、何々先生のために何々書すと云ったようにもったいぶったのばかりであった。股野が何か云うと、向うの支那人も何か云う。しかし両方の云う事は両方へ通じないようである。
二十
波止場《はとば》から上《あが》って真直《まっすぐ》に行くと、大連の町へ出る。それを真直に行かずに、すぐ左へ折れて長い上屋《うわや》の影を向うへ、三四町通り越した所に相生《あいおい》さんの家がある。西洋館の二階を
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