穿《は》いていた。遠くから見たと同じように浮き立たない家であった。造作《ぞうさく》のつかない広い空家《あきや》へ洋灯《ランプ》を点《とも》して住《すま》っているのかと思った。這入るとすぐの大広間に置いてあったオルガンさえ、先の持主が忘れて置いて行ったものとしか受取れなかった。暗い廊下を突き当って右へ折れた翼《ウイング》の端《はじ》の室《へや》へ案内された。中を二つに仕切ってある。低い床には、椅子と洋卓《テーブル》と色の褪《さ》めた長椅子とが置いてあった。高い方は畳を敷いて、日本らしく取《と》り繕《つくろ》ってあった。ちょうど土間から座敷へ上《あが》るようにして、甲から乙に移る構造である。余はいきなり畳の上に倒れた。三四十分の後《のち》膳《ぜん》が出た。橋本がしきりに起きて食えと勧めたが、ついに起きなかった。第一食卓に何が盛られたかをさえ見なかった。眼を開ける勇気すら無かったのである。

        四十三

 朝起きると、馬が来たとか来ないとか云って橋本の連中が騒いでいる。連中は三人だから、一人が一つの馬に乗るとすれば、三匹|要《い》る訳になる。この茫漠《ぼうばく》たる原の中で、生
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