えぎ》って長く続いているようである。余は高いこの影を眺めて、いつの間にか万里の長城に似た古迹《こせき》の傍《そば》でも通るんだろうぐらいの空想を逞《たくまし》ゅうしていた。すると誰だかこの城壁の上を駆けて行くものがある。はてなと思ってしばらくするうちに、また誰か駆けて行く。不思議だと覚《さと》って瞬《またたき》もせず城壁の上を見つめていると、また誰か駆けて行く。どう考えても人が通るに違いない。無論夜の事だから、どんな顔のどんな身装《みなり》の人かは判然しないが、比較的明かな空を背景にして、黒い影法師が規則正しく壁の上を馳《か》け抜ける事は確《たしか》である。余は橋本の意見を問う暇もないほど面白くなって、一生懸命に、眼前を往来するこの黒い人間を眺めていた。同時に汽車は、刻々と城壁に向って近寄って来た。それが一定の距離まで来ると、俄然《がぜん》として失笑した。今までたしかに人間だと思い込んでいたものは、急に電信柱の頭に変化した。城壁らしく横長に続いていたのは大きな雲であった。汽車は容赦なく電信柱を追い越した。高い所で動くものがようやく眼底を払った。

        三十九

 狭い小路《
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