際限もなく蔓《はびこ》っている赤い草のあなたは薄い靄《もや》に包まれて、幾らか蒼《あお》くなりかけた頃である。あからさまに目に映るすぐ傍《そば》をよくよく見つめると、乾いた土ではない。踏めば靴の底が濡《ぬ》れそうに水気《みずけ》を含んでいる。橋本は鹹気《しおけ》があるから穀物の種がおろせないのだと云った。豚も出ないようだねと余は橋本に聞き返した。汽車に乗って始めて満洲の豚を見たときは、実際一種の怪物に出逢《であ》ったような心持がした。あの黒い妙な動物は何だと真面目《まじめ》に質問したくらい、異《い》な感じに襲われた。それ以来満洲の豚と怪物とは離せないようになった。この薄暗い、苔《こけ》のように短い草ばかりの、不毛の沢地《たくち》のどこかに、あの怪物はきっと点綴《てんてつ》されるに違ないと云う気がなかなか抜けなかった。けれども一匹の怪物に出逢う前に、日は全く暮れてしまった。目に余る赤黒い草の影はしだいに一色《ひといろ》の夜《よ》に変化した。ただ北の方の空に、夕日の名残《なごり》のような明るい所が残ったのである。そうしてその明るい雲の下が目立って黒く見える。あたかも高い城壁の影が空を遮《さ
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