を二冊出して、これへどうぞ同《おん》なじものを二つ書いて下さいと云った。同《おな》じでなければいけないのかと尋ねると、ええと答える。その理由は、夫婦別れをしたときに、夫婦が一冊ずつ持っている事ができるためだそうだ。
こう書いて行くと、朝鮮の宴会で絖《ぬめ》を持出された事まで云わなくてはならないから、好い加減に切り上げて、話を元へ戻して、肥《ふと》った御神さんの始末をつけるが、余は切ない思いをして、汽車の時間に間に合うように一句浮かんだ。浮かぶや否や、帳面の第三頁へ熊岳城《ゆうがくじょう》にてと前書《まえがき》をして、黍《きび》遠《とお》し河原《かわら》の風呂《ふろ》へ渡《わた》る人《ひと》と認《したた》めて、ほっと一息吐いた。そうして御神さんの御礼も何も受ける暇のないほど急いでトロに乗った。電話の柱に柳の幹を使ったのが、いつの間にか根を張って、針金の傍《そば》から青い葉を出しているのに気がついて、あれでも句にすればよかったと思った。
三十八
窓から覗《のぞ》いて見ると、いつの間にか高粱《こうりょう》が無くなっている。先刻《さっき》までは遠くの方に黄色い屋根が処々
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