を降りて梨畠へ行こうとしたが、正門から這入《はい》るのが面倒なので、どうです土堤《どて》を乗り越そうじゃありませんかと案内が云い出した。余はすぐ賛成して蒲鉾形《かまぼこがた》の土塀《どべい》を向側《むこうがわ》へ馳《は》せ下《お》りた。胃は実に痛かった。樹《き》の下を潜《くぐ》って二十間も来ると、向うの方に橋本始め連中が床几《しょうぎ》に腰をかけて梨を食っている。腕に金筋《きんすじ》を入れた駅長までいっしょである。余も同勢に交《まじ》って一つ二つ食った。これは胃の中に何か入れると、一時痛みが止むからである。そうしてまた畠の中をぐるぐる歩き出した。ここの梨はまるで林檎《りんご》のように赤い色をしている。大きさは日本の梨の半分もない。しかし小さいだけあって、鈴なりに枝を撓《しな》わして、累々《るいるい》とぶら下っているところがいかにもみごとに見える。主人がその中《うち》で一番|旨《うま》い奴《やつ》を――何と云ったか名は思い出せないが、下男に云いつけて、笊《ざる》に一杯取り出さして、みんなに御馳走《ごちそう》した。主人は背の高い大きな男で、支那人らしく落ちつきはらって立っている。案内の話で
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