。あれは何と云う山だろうと傍《そば》にいる大重君《おおしげくん》に尋ねたら、大重君も知らなかった。大重君は支那語の通訳として橋本に随《つ》いて蒙古《もうこ》まで行った男である。余の質問を受けるや否やどこかへ消えて無くなったが、やがて帰って来て、高麗城子《こまじょうし》と云うんだそうですと教えてくれた。土人を捕《つら》まえて聞いて来たのだそうである。固《もと》より支那音《しなおん》で教わったのだが、それは忘れてしまった。
 濡《ぬ》れ手拭《てぬぐい》を下げて、砂の中をぼくぼく橋の傍《そば》まで帰って来ると、崖《がけ》の上から若い女が跣足《はだし》で降りて来た。橋は一尺に足らぬ幅だからどっちかで待ち合せなければなるまいと思ったが、向うはまだ土堤《どて》を下《お》りきらないので、こっちは躊躇《ちゅうちょ》せず橋板《はしいた》に足をかけた。下駄《げた》を二三度鳴らして、一間ほど来たとき、女も余と同じ平面に立った。そこで留まると思いのほか、ひらひらと板の上を舞うように進んで余に近づいた。余と女とは板と板の継目《つぎめ》の所で行き合った。危《あぶ》ないよと注意すると、女は笑いながら軽い御辞儀《おじ
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