この河原《かわら》の幅は、向うに見える高粱《こうりょう》の畠《はたけ》まで行きつめた事がないからどのくらいか分らないが、とにかく眼が平《たいら》になるほど広いものである。その平《たい》らなどこを、どう掘っても、湯が湧《わ》いて来るのだから、裸体《はだか》になって、手で砂を掻《か》き分けて、凹《くぼ》んだ処《ところ》へ横になれば、一文も使わないで事は済む。その上寝ながら腹の上へ砂を掛ければ、温泉の掻巻《かいまき》ができる訳である。ただ砂の中を潜《もぐ》って出る湯がいかにも熱い。じくじく湧《わ》いたものを、大きな湯槽《ゆぶね》に溜めて見ると、色だけは非常に奇麗《きれい》だが、それに騙《だま》されてうっかり飛び込もうものなら苛《ひど》い目に逢《あ》う。橋本と余は、勢いよく浴衣《ゆかた》を抛《な》げて、競争的に毛脛《けずね》を突込《つっこ》んで、急に顔を見合せながら縮《ちぢ》んだ事がある。大の男がわざわざ裸になって、その裸の始末をつけかねるのはきまりが好いものじゃないから、両人《ふたり》は顔を見合せて苦笑しながら小屋を飛び出して、四半丁《しはんちょう》ほど先の共同風呂まで行って、平気な風にどぼ
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