らしい。軌道《レール》の間から草が生えている。軌道の外にも草が生えている。先まで見渡すと、鉄色の筋が二本|栄《は》えない草の中を真直《まっすぐ》に貫《つら》ぬいている。しかし細い筋が草に隠れて、行方知《ゆきがたし》れずになるまで眺め尽しても、建物らしいものは一軒も見当らなかった。そうして軌道の両側はことごとく高粱《こうりょう》であった。その大きな穂先は、眼の届く限り代赭《たいしゃ》で染めたように日の光を吸っている。橋本と余と荷物とは、この広漠《こうばく》な畠《はたけ》の中を、トロに揺られながら、眩《まぶ》しそうに動いた。トロは頑丈《がんじょう》な細長い涼み台に、鉄の車を着けたものと思えば差支《さしつか》えない。軌道の上を転《ころ》がす所を、よそから見ていると、はなはだ滑《なめ》らかで軽快に走るが、実地に乗れば、胃に響けるほど揺れる。押すものは無論支那人である。勢いよく二三十間突いておいて、ひょいと腰をかける。汗臭《あせくさ》い浅黄色《あさぎいろ》の股引《ももひき》が背広《せびろ》の裾《すそ》に触《さわ》るので気味が悪い事がある。すると、速力の鈍った頃を見計《みはか》らって、また素足《す
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