かいっさい知らなかった。その上、これから先どことどこへ泊って、どことどこを通り抜けるのかに至るまで、全く無頓着《むとんじゃく》であったのだから橋本も呆れるはずである。しかし、おい鉄嶺《てつれい》へは降りるのかと聞いて、いや降りないと答えられれば、はあ、そうかと云ったなりで済ましていた。別に降りて見たい気にもならなかったからである。したがって橋本は実に順良な道伴《みちづれ》を得た訳で、同時に余は結構な御供を雇った事になる。
 いよいよプログラムがきまったので、是公に出立の事を持ち出すと、奉天へ行って、それから北京《ペキン》へ出て、上海《シャンハイ》へ来て、上海から満鉄の船で大連まで帰って、それからまた奉天へ行って、今度は安奉線《あんぽうせん》を通って、朝鮮へ抜けたら好いだろうとすこぶる大袈裟《おおげさ》な助言《じょごん》を与える。その上、銭《ぜに》が無ければやるよと註釈を付けた。銭が無くなれば無論貰う気でいた。しかし余っても困るから、むやみには手を出さなかった。
 余は銭問題を離れて、単に時間の点から、この大袈裟な旅行の計画を、実行しなかった。そのくせ奉天を去っていよいよ朝鮮に移るとき、
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